前回の記事で、対人恐怖を感じていたころの話を書きました。
人が怖いと感じるが故に、私が日常的に行ってきた(せざるを得なかった)人間観察。
観察期間の中で出会った『面白い人たち』について(勝手に笑)振り返り、考察していきます。
最初のひとりは…職場で出会ったヤマダ女史(仮名)
職場の人員が増えることにともない、チームの数が増えることになって、リーダーを増やさなければならない状況になった時でした。
たまたま古株だった私も同僚数人と一緒に新しいリーダーのうちの一人にしてもらうことになったことで、ヤマダ女史との関わりがはじまりました。

ちなみに、リーダーになるという選択をしたのも、私が他人軸で生きていたから…
その選択をした理由は、やりたかったからではなく、先輩からの誘いを断るのが怖かったからです。
リーダーになれば、自分一人で黙々と仕事をしているよりも、チームのメンバーと関わる時間、人と関わる機会も時間も断然増えることになるのはわかりきってました。
密かに人とのかかわりが怖いと感じながら毎日働いていたので、出来れば断りたかった。
でも、先輩からの誘いを断るのも怖くて、やることを決めたというわけです。
ヤマダ女史はリーダー研修の担当者。
私を含む新人リーダーの育成担当者というわけです。
常に人への警戒心が働いてしまう私。
初めて会ったときから彼女には”なにか”を感じていました。
レーダーが反応していたんです。
<キケン>
はじめの机上研修の時は、特になにもなく淡々と業務を教えてくれる人でした。
「あれ?」
挨拶をすれば笑顔で返してくれるし、私のレーダーが敏感すぎるのね、と思っていました。
が…
その後、実務になると様子が変わってきたのです。
ヤマダ女史はくっきり、はっきり『表』と『裏』がある女子だったのです。

明るく笑顔で感じが良くあいさつを返してくれるのは『表』のヤマダさん。
『裏』はというと…
研修後、1件ずつ、業務の処理を完了したらすべてヤマダさんにチェックをしてもらうために提出しなくてはいけませんでした。
ある日、休憩から戻ってくるとPCの上に紙が…
それは私が提出した紙で、その紙の裏に赤字で<休憩から戻ったらヤマダのデスクへ>と書かれている。
<キケン>
レーダーがビンビンに反応する。
でも行かないわけにはいかず、紙を持って恐る恐る行ってみると…
「なんやねんこれ!」
見たことがない表情でデスクに肘をつきながら、ため息をつきながらダメポイントをガンガン指摘してくるヤマダさん。
これまで見ていたヤマダさんとは別人みたいでした。
私はこういうシーンに遭遇したとき、いつも自分が分離する感覚を感じます。
ちゃんと話は耳から入ってくるし、反応しなければいけないから聞いてはいるんだけど、心はそこにない。
そんな感覚になってしまうんです。
眉間にシワを寄せて「あかんやん」「なんでこんなことになんねん」関西弁でご指摘が次々と飛んでくる…
「あ~こういうパターンだったのか~」
最初にレーダーが反応していた理由が判明した瞬間でした。

それから、なにかあると言われるお決まりの言葉。
「なんやねんこれ!」
はい。ミスはミスです。
私がデキる女ではないこと、成長が遅いこと、ヤマダ氏の求めるレベルは到底及んでいなかったこと、お手間をかけていただろうことは重々承知してます。(そこはすみません)
それでも、呼び出され、すみません以外になにか言うとさらにキレてしまうヤマダさんから何分もつづくお説教をされていたある日、心を身体から離脱させた状態で「なんやねんこれ…」と思ってしまった私。笑
仕事のミス、改善点のやり取りをする時は、氷の女というべきか雷の女というべきか。
でも、朝と帰りの挨拶はいい笑顔。
…その激しい二面性が怖くてたまりませんでした。
「表と裏なのか、A面とB面?を持つスタイルなのか…」

そんな気持ちを誰にも話せず、一人で考えていたとき、ある日の帰り道で同僚のカワグチさん(仮名)が言ってくれました。
「ヤマダさんって、表裏激しすぎじゃない?」
そのひとことを耳にした瞬間、
うわーーーーーーーーっとなにかが開けた感覚がありました。
そう思ってたのは、私だけじゃなかった!!!
それが分かった瞬間でした。
嬉しくて、激しく同意してしまいました。
感じていたことすべてを言えたわけではないけど。
でも、カワグチさんがカミングアウトしてくれたことで笑 その日からカワグチさんとはお互いに悩みを相談できる関係になれました。
なにかあるとすぐ相談しあってました。
帰り道でいつもその日あったことを報告しあい、対策を話しあったりして。
あのとき、カワグチさんの存在にどれだけ救われたことか…
カワグチさんという心の友ができたのは、ヤマダさんのおかげでした。
結局、ヤマダさんのその独自のスタイルは、研修最後の日まで変わりませんでした。
そして、数カ月の研修の中で彼女のやり方、「なんやねんこれ!」を食らわなかった人は一人もいませんでした。
出張で来ていた、関西人のヤマダさん。
無事研修が終わり、関西に戻る日が来ました。
ありがとう、さようならパーティーをして、全員でお見送りをしました。
エレベーターが閉まったとき…
全員「ヤッターーーーーーー!!!」と大喜び。
(私は大声を出して喜ぶことはできず汗、ただニヤニヤしてました)
冷静な同僚が「聞こえちゃうよ!」と言って、みんながハッとしたシーンが忘れられません笑
その日以降、私が再びヤマダさんと会うことはありませんでした。
電話では話したけど、電話口のヤマダさんは『表』の方のヤマダさんでした。
同僚は別の研修で何度か会ったそうだけど、そういう時はいつも『表』のヤマダさんだったと聞きました。

『表』と『裏』を激しく使い分ける人。
あなたは出会ったことはありますか?
そういう人って、自分の意志で、望んでそうしているの?
どういう気持ちでそうしているんでしょう?
<ミスをした人には不機嫌な顔で注意をしなければならない>と誰かに教えられたのだろうか?
<厳しい言葉で説教しないといけない>と思っているのだろうか?
その『裏』を笑顔の挨拶でカバーしているの?
それとも、仕事の時だけ別人になるようにしているの?
それとも、『表』と『裏』があるのがデフォルトなの?
どっちが本当のヤマダさん?
あの当時の私は、人からどう思われるかを必要以上に気にしていました。
だから
「表と裏があるよね」
と言われるなんてもってのほか。
いつもまわりを警戒していたので、感情をそのまま出すとか、さっき出した感情をなかったものとして、コロッと変わって別の表情を見せる…なんてことは絶対にできませんでした。
だから、ある意味『表』と『裏』をキレイに使い分けるヤマダさんを毎日見るうちに「ここまで使い分けるのはすごいな…」とも思っていました。
実は女優みたいに、楽しんでいたのだろうか…
だとしたら、それまたすごい。
その後、私はヤマダさんレベルでくっきりはっきり表と裏がある人には出会ったことがありません。
そういう点では、貴重な出会い?経験?だったのかもしれません。
でも、できればもう出会わずに生きていきたい…笑
関わった期間は数カ月なのに、いまだに私の記憶に残りつづけるヤマダさん。
今はどこでどうしているんだろう?
もう仕事をしていなければ今は『表』しか使っていないかもしれない。
ヤマダさん、世界のどこかであの笑顔でしあわせでいてください。